これは、黄楊(ツゲ)の木の枝です。

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主人が理事を務めさせていただいている博多人形商工業協同組合。

その組合の事業のひとつとして人形師の後継者育成講座というのがあります。

 

育成講座では、なにより先に、まず木を削り自分だけのヘラを作ることから始まるとのことで

写真のツゲはそのときの参考資料として使われたもの。

開講式から帰った主人が、先日持ち帰りました。

 

上の娘が勝手にカッターで削ったので、上のほうの皮がむけています。

 

 

亡くなった主人の父はもちろん、主人も複数のヘラを使い分けるのですが、ツゲはもちろん、竹製のものや金属でできたもの

素材もですが、形状も様々です。

 

来月、亡くなって三度目の命日を迎えるからでしょうか、お盆が近いせいでしょうか、

夏が近づくと父のことをよく思い出します。

 

主人の父が亡くなったとき、お棺のなかに父の遺体と一緒に入れるものを準備しました。

 

家族で話し合って、初孫である娘が書いたおじいちゃんへのお手紙と、向こうへ行っても仕事ができるようにと、愛用していた筆とヘラを入れることにしました。

 

バタバタとお通夜を済ませた次の日、主人とふたりで仕事場へ行き、棺(ひつぎ)のなかへ入れる筆とヘラを選んだのですが、なかなか決まりませんでした。

 

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それこそ、数えきれないほどに筆もヘラもお持ちでしたし、主人も私も、疲れやら焦りやらあったのでしょう。

 

できるだけ良いヘラをおじいちゃんに持たせてあげたいと選ぶ私に対し、

これくらいのヘラでいいよと選ぶ主人。

 

「これは?一番大事にしとったのどれ?

なんでもっといいの持たせてあげんと?お父さんが使いやすいのがよかろうもん?!」

 

あれこれと口を出す私に・・・、主人が一喝。

 

「そんないいヘラは焼いたらイカン!残しておかな!」

 

「でも、お父さんには一番使いやすい道具持たせてあげたいやない!1本だけやん!ケチ!残してどうするとよ!」

 

「いいヘラこそ残しておかな!

煤竹(すすだけ)のやら、いまは手に入りにくいのもあると。

俺がこれから使うっちゃけん!」

 

・・・私ね、そんないいヨメじゃないんです。(^^ゞ

生意気ですし、主人の気持ち全然わかってないとき多いです。

 

本当に・・・、わかってないなぁと思う時、多いです。

あとになって冷静に考えると、たいてい主人のほうが正しいこと言っています。

叱られて、気づくこと、多いです。

 

 

お父さんは、ほんとうに素晴らしい人形師でしたから。

「弘法筆を選ばず」というように、どんな筆と道具でも、それはそれなりで、あちらでもいいものを作られるのではないでしょうか。

 

ひょっとすると、また気持ち新たに、ご自分でヘラを作っておられるかもしれません。

 

母は、ラジオが大好きだった父のために、最後までラジオを入れたがっておられましたが「ラジオは燃えんから!」と、何度も何度も家族に説得されていたことを今でも覚えています。

 

ラジオがなくとも、先にいかれた、綱場の先生(与一先生)や、たくさんの先輩のお人形師さん方と楽しくにぎやかにやっておられるのではないでしょうか。

 

 

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主人のヘラ箱には「吉将」の名の入ったもの、イニシャルの「Y」が書かれたものの他に、父から受け継いだ形見のヘラが大切に仕舞われています。

 

あの時、いっときの感情で焼かなくて本当によかったと、今になってよく思うことがあります。

 

お盆に、父が帰ってくるのが、待ち遠しいです。

家族みんなで、お迎えしたいと思っています。