「実り」 ~嫁ぐ日の朝の顔~
先日、福岡にある「株式会社BCC」様より 会社創立50周年の記念品としてお使いいただく人形をお納めさせて頂きました。
BCCは、情報ネットワークサービスや、ソフトウェア開発などIT関連の企業さまです。
NECやRKBなどの関連会社であり、従業員は400人超。
大きくて歴史のある会社です。
業務の内容も、最新の情報に囲まれて、一見すると私たち伝統産業とは遠いところにあるかと思うかもしれませんが
記念品を選んでいただく際に、担当者の方がずっと松尾の博多人形のファンでいてくださったことから、今回のご縁ができました。
今年の春から、話し合いや打ち合わせを重ね、最初はキャラクターっぽいPOPなお人形から話が始まったのですが
社内の方々のご意見をいろいろと取り入れることで、博多人形らしい美人ものの人形を仕上げることになりました。
「衿を正す」その姿には、これからの未来に向けてまた新たな気持ちでのぞむという自らを律する気持ちを込めました。
博多美人のまとう着物のすそ模様には日本古来の吉祥文様である松と梅。
また、BCCの創立記念日が10月の25日であることから、秋らしく、帯はブドウの柄を選びました。
葡萄(ブドウ)には、実がたくさん付くことから「豊穣」や「繁栄」、そしてツルがからみ合うことから「良縁」などの意味が込められています。
これらをひとつひとつの人形に手作業で描きいれていきます。
まるで、それぞれが一点ものの手描き友禅の着物をまとっているようなお人形に仕上がりました。
主人と話し合って、BCCの50年のご活動への敬意や、この人形と出会った全ての方々がますますご発展されるよう、お祝いの気持ちをせいいっぱい込めさせていただき「実り」という名前を人形につけました。
「実り」は、正面からみると凛とした表情をした女性です。
着物の格に合わせて、ちょっと「よそいき」風なお顔・・・と思っていたのですが
桐箱につめる朝の日、たまたま下からのぞいてみると
なんとも穏やかな、そして幸せそうなお顔をしていました。
見る角度によって、人形の顔がかわって見えるというのにも驚きましたが
これから、自分が大切にしてくださる方のもとへ嫁いでいくことを心から誇りに思い、また楽しみにしているようにも見えて、なぜだか、私自身の心がとてもホッと安心したように覚えています。
ひとつひとつのお人形を、丁寧につつみ、桐箱に入れてお納めさせていただきました。
この子たちはみんな、我が家の箱入り娘たちです。
BCCのご担当者さまも、まるで我が子を見守るようにいつも仕上がりを心待ちにしてくださっていました。
大切な節目の記念の品に、松尾吉将の博多人形をお使いくださった株式会社BCC幸田社長にはこころから感謝申し上げます。
北は北海道、南は沖縄まで・・・日本全国へ旅立っていった「実り」たち。
どうかどうか末永く、可愛がっていただけますように。