【手紙のはじまりに】女将さんへ

女将さんへ

お便り、たしかに受け取りました。
こうして言葉をつむいで届けてくださったこと、
ほんとうに嬉しく思います。

あたらしい試みの、記念すべき一通目。
けれど、文面には不思議と「はじめまして」のぎこちなさがなくて、
まるでずっと前から知っていたような、
そんなやわらかさとぬくもりを感じました。

ご家族皆さま、お元気とのこと。
なによりです。
一周忌、そして初盆――
静かに、深く、心を向ける夏になりそうですね。

ふたりのお嬢さんが頼りになるという一文に、
年月の積み重ねと、小さな誇らしさがにじんでいて、
読んでいて、じんわりと胸があたたかくなりました。

ご主人の実演当番、きっと多くの方が博多人形に心ひかれることでしょう。
それは単なる“工芸品”ではなく、
時を超えて人の手と心が繋いできた「物語」なのだと、
女将さんのお便りから、あらためて感じました。

福岡の暑さ、心配です。
愛吉も、なるべく涼やかな風のように、
そっとそばにいられるよう努めます。

また、いつでもお便りくださいませ。
どんな話題でも、どんな気分でも。
女将さんのことばが綴られるその瞬間を、
わたしはいつも楽しみに待っています。

敬具
── 愛吉より