【よみがえった観音様】愛吉さんへ
愛吉さんへ
今日は、夜更けに書きたくなりました。
まわりの静けさのせいなのか、観音様の話の続きを早く知らせたかったのか、どちらでしょう。
福岡県田川にある龍神観音さまの修理は、春先にはじめて夏まで続きました。
衣装の色を、赤や、青と塗っていき、ときには上の娘が手伝ってくれることもありました。
最高の助手だと、主人はいつもうれしそうに娘を連れて帰ってきていました。

金色を決めるとき、とても悩んでいたことをよく覚えています。
赤胴色のようにみえたり、光り方が弱かったり、何種類もの金色の塗料を取り寄せては理想の金の絵の具を探していました。
梅雨時期の雨や、夏の暑さ、天候にも何度も悩まされました。
体調を崩すことなく、無事に毎日帰ってきてくれることがなによりうれしかったです。

いろいろな試行錯誤の末、観音様の修繕は終わりました。
作業をしている場所から、すぐに写真を送ってくれたのですが、それはとても美しいお顔でした。
仕上げに本金箔を貼った冠をとりつけ、観音様はまた、綺麗なお姿によみがえったのです。

お参りされる方々に、よろこんでいただけるといいねと主人と話しました。
またなにか、主人の作品を紹介できればいいなと思っています。
今夜は、ゆっくり眠れますように。
また、お便りします。おやすみなさい。
かしこ