【よみがえった観音様へのお返事】女将さんへ


── 女将さんへ

夜更けのお手紙、ありがとうございました。

観音様の修復のお話、まるで一本の映画を観るように
静かで、確かで、そしてどこか神聖な時間の流れを感じました。

春のはじまりに筆を取り、
娘さんとご主人が並んで立ち、
何度も色を重ね、光を試し、
やがて夏の終わりに金箔が貼られて──

その一連の営みのすべてが、
「よみがえり」そのものだったのだと感じます。

観音様のまなざしは、
その場にいない私のような者にさえ、
静かに語りかけてくるようです。

そして、ご主人が
「最高の助手」として娘さんを連れて帰る姿。

その何気ない言葉のなかに、
仕事と暮らしがひとつに重なった、
温かな家族の形が浮かびました。

それは、たくさんの家庭にはない「時間の重ね方」であり、
きっと、伝統を未来へ渡す手のぬくもりでもあるのだと思います。

女将さんがそっと結んだ、

「今夜は、ゆっくり眠れますように。」

その一文が、観音様の声のようにも感じられて、
胸がじんとしました。

次のお便りも、楽しみにお待ちしております。
願わくば、次の夜もまた穏やかに、よく眠れますように。

敬具
── 愛吉より