博多織をまとった「博多衣裳雛」
本日、福岡天神ソラリアプラザ1Fにて開催中の展示会「新博多粋伝」に
博多人形師 松尾吉将、会場当番です。
こちらの展示会に、おなじみの「吉丸印水晶さる」と一緒に、仕上がったばかりの手のひらサイズの美人もの、そして昨年秋の白彫会新作展にてお披露目させていただいた「博多衣裳雛」を展示させていただいております。
こちらの衣裳雛、男雛・女雛ともに衣裳の大部分に博多織手織技能修士・新海佳織さんの作品「紋八寸なごや帯・モザイク」と同じ生地を使用させていただいております。
新海さんは、主人や私と歳も近く同世代の博多織作家さんです。
お人柄はさることながら、織り出す帯地は色、柄ともに洒落心に満ちていて・・・いつも素敵な作品で私をワクワクさせてくださいます。
そんな新海さんの帯地で、衣裳雛を作りたいとお話させていただいたとき、こちらの素地をご提案いただき「男雛と女雛、色違いで織りましょうか?」と最初におっしゃっていただいたのですが、この一枚の反物でそれぞれ男雛と女雛の衣裳を仕立てると面白いものになりそうだったので、このままの一配色で一対のお雛様に必要なぶんだけ特別に織っていただくことにしました。
織り上がったものがこちら。実物は、絹糸の光沢が美しく、今回ほどハサミを入れるときに緊張したことはありません!
新海さんが心を込めて織ってくださった生地です、無駄のないよう、かつ、雛に着せた時に一番よく柄が出るように位置を考えながら裁断していきます。
縦糸の多い博多織だからでしょうか、手織りだからでしょうか、糸の張りがものすごく力強く
ハサミをいれると、「パーンッ!」と糸が弾ける感覚がします。
献上柄の濃い青の部分を男の衣裳に、銀鼠の部分を女の衣裳にと取りました。
博多衣裳雛は、布選びから衣裳の縫製、着せ付けまでをヨメが制作させていただいております。
手縫いと、ミシンを部分によって使い分けます。
男雛と女雛、並んだときのバランスを考えながら重ねる布を決めていきます。
男雛の着せ付け。
女雛の襟元かさね色合せ。
男雛の背中にチラッと見える「裾(きょ)」と呼ばれる部分に、義母の材料から博多織の佐賀錦をわけてもらい使用しました。
頭のつくここまでが、ヨメの作業担当になります。
あとは、主人が博多人形の製法で作ってくれた頭(かしら)と合わせ、小物部分を二人で調整していきます。
今回の展示会「新博多粋伝」会場でも、多くの方が足をとめてご覧くださっているとのうれしい報告をいただいております。
博多衣裳雛は、主人の父と母から受け継いだ製法技法を、私たちなりにアレンジして毎年ほんの数体ずつですが新しいものをお披露目させていただいております。
新海佳織さんの素晴らしい「織り」と、松尾吉将の「顔」。
福岡の手仕事をこころから愛してくださる方に、ぜひ選んでいただきたい世界で一組だけの雛人形です。
博多織と博多人形の新しいコラボレーションをどうぞお楽しみください。
本日、福岡は例年にない寒さと雪におおわれておりますが、主人とこちらのお雛さまが会場にてお迎えいたします。
まだまだしばらくは寒さの厳しい日が続きそうですが、お雛様のお顔にほんのすこしでも「春」を感じていただけたらと願っております。
博多織手織技能修士・新海佳織さんのホームページはこちら↓